やりがい搾取はまるでシャンパン

「やりがい搾取」ってワードが最近注目を集めていますよね。


やりがい搾取の定義としては、

「やりがいを強く意識させることにより、本来支払うべき賃金の支払いを免れること」

のようです。


やりがい搾取は無くすべきだと言うのが、大多数の意見だと思います。しかし、やりがい搾取が横行する職場で働いてみて、「これ絶対無くならないな」と思ったのが正直なところです。


何故かというと、やりがい搾取における会社と従業員の関係が、ホストとそのお客さんみたいになっているように見えたからです。


ホストにハマっている人って、周囲の人が止めたくらいではなかなかお店に通うことを辞めないですし、無理をしてでも高額なシャンパンなどを入れようとする人が多いですよね。


これと同じで、「やりがい」という名のシャンパンを「会社」という名のホストに貢いで快感を得るのがやりがい搾取の正体なんです。


しかも、ホストに通っている人って、指名のホストさんと喧嘩別れしたとしても、少し経ったら別のお店に通い始めてた。みたいなこともザラですよね。

実際、知り合いでホストクラブに通うのが好きな子が居たのですが、その子は指名のホストさんと喧嘩別れしては別の店に行くみたいなことを繰り返していました。


だから、やりがい搾取に逢う人はそういう職場を転々と渡り歩きますし、そういう会社は無くならないんです。


ここからは、「やりがい搾取」がホストクラブの仕組みに似ている理由を詳しく説明していきます。


① 目に見えた変化 


やりがいがあるということは、やることで何かしら変化があるということです。

ホストクラブでは高額なシャンパンを入れることにより、指名のホストさんの売り上げや地位を向上させるという目に見えた変化があります。

仕事においても同様で、やりがいを持って働くことで「営業成績」「お客さんの笑顔」など、目に見えた変化を感じることができます。


目に見えた変化があることで、傍から見たら搾取されていたとしても、本人は「やってよかった」と感じ、「またやろう」という動機づけになってしまうのです。

  


②周囲からの圧力や煽り


ホストクラブでは、売り上げを伸ばすためにホストがお客さんを煽ってシャンパンを入れさせようとすることがありますよね。

また、別のお客さんが高額のシャンパンを入れているのを見て負けじと自分も!と周囲の影響を受けることも多いです。

やりがい搾取の現場も同様で、上司や周りの社員などの影響を受け、「自分も頑張らないといけないんだ」と強く感じることで、お互いに刺激し合い、より長く、より多く働こうとするのです。

 

③人のためという正当性


ホストに通っている人たちは、騙されているとか搾取されているとは思っていないですよね。

熱狂的にハマる人は、「ナンバーワンになりたい」というホストさんの夢を叶えてあげたい。という意志を強く持っている方が多いのではないでしょうか。

他人の夢のためにそこまでする必要ないのでは?と思う人が多いかと思いますが、これはやりがい搾取も同様です。

自分が働いていたのは教育業界で、みんな何かにつけて「子供たちのため」というワードを出していました。その時はそのワードに釣られて、働く理由に正当性を感じ、みんなみたいに出来ない自分が悪いと思っていました。


しかし、いくら子供たちのためといっても所詮はお客さんであり、家族でも友達でもないのです。

そのためにたくさんの時間を割いて、自分の本当の家族や友達を蔑ろにする必要ってあるのかな、と辞める頃になってふと考えるようになりました。  


④優越感


ホストクラブでは、他のお客さんに見せつけるように高額なシャンパンを入れて、優越感を得たり、周りから特別扱いをされることに快感を覚えている人が多いのもまた現状です。

シャンパンタワーなんてその集大成みたいなものですよね。

もちろんやりがい搾取でも同様で、たくさん働いた自分を誇りに思い、優越感に浸っているパターンが多いです。

「自分はこんなにも会社やお客さんのために全てを尽くして働いている。あなたにはこれができるのか?」といった調子で知らず知らずのうちにマウントを取り、「やりがい」という名のシャンパンを積み上げてタワーを作り上げます。


こういう職場はやりがいのシャンパンタワーを作り上げた人を称えて役職を与えてしまったりするので、これがまた①の目に見えた変化となって彼らに「やりがい」を貢がせるモチベーションになっていきます。


「搾取」されている自覚なく「やりがい」を貢ぎ続ける構造が出来上がっている以上、辞めさせようとしても辞められないのが本当のところなんです。