忘れられない生徒の話①

Twitterでとあるやり取りを見ていて思うところがあり、書いてみようと思いました。

元職場の方が見ていたら、、という懸念から迷いがありましたが、公益性があると思うので正直に書こうと思います。


以前、塾で働いていた際に気になる子が何人かいました。今回はそのうちの1人の話になります。


その子は当時中学2年生で、他の塾に行っていましたが、手に負えないというような話で、辞めることになったそうです。


その時は、自信を失って落ち込んでいる様子だったそうですが、塾をかわってからは、楽しく通えるようになったとのことで、よかったなぁと思っていました。


その子(Kさんとします)と初めて会った時、やっていたのは小6の算数の問題でした。6年生で習う公式をほとんど覚えておらず、1問1問かなり時間がかかっていましたが、コツを教えたら少し分かるようになった様子でした。


それからしばらく一緒にやってきていくつか気になるところが出てきました。


まずは、同級生から「いじり」をされていることです。

Kさんは学年問わず色んな子に話しかける人懐っこい性格で、ひとりぼっちになることはほとんど無かったのですが、やはり同級生からするとちょっと天然というか、面白く見えるところがあるようでした。


そのため、遊ぶ時に仲間に入れては貰えるけど「いじられキャラ」として定着している感じでした。

本人もそれを受け入れてるのかと思っていましたが、ある休み時間にみんなでじゃれ合って遊んでいたら、Kさんが「誰か今の撮ったりしてないよね?!」とふいに言い始めました。


塾の子は優しい子ばかりで、本当に誰も撮ったりなんかしてなくて、「撮ってないよ〜w」って感じで終わりましたが、過去に何か嫌がらせがあったのかなと勘繰ってしまいました。


こういう子はいじっても気づかない風に見えて実はなんとなく分かっていることも多いので気をつけないといけないと思いました。


次に気になったのは家族のことです。

ある時、保護者懇談会があって、Kさんのお母さんが教室に来ました。

Kさんのお母さんは懇談をしている先生の話をまるで聞いていない様子で、一方的に「ウチの子ってなかなか受験に興味無くって困っちゃいます〜」といった調子で早口に喋り続け、正直会話になりませんでした。


こちらが何か言えば言うほど火に油状態で同じことを繰り返しベラベラ話されて、次の懇談会の時間になっちゃう、、、!ヤバい!といった空気になり、なんとか帰らせるので精いっぱいでした。


このお母さんの調子を見て、家でどんな風にコミュニケーションをとっているのかと不安になりました。


それ以外にも、塾に来る時間を何度も間違えるなど、この家大丈夫かな?と感じる点が多くありました。


しかし、これらはまだ序の口。衝撃を受けたのは、模試をやった時のことでした。


模試の最初に志望校を書くシートがあり、それを完成させないと提出が出来ないのですが、これに異様なほど時間がかかりました。


お母さんが、受験に興味がないと言っていたので、志望校が思いつかないのだろうと思い、Kさんが中学校でやっている部活がある高校などをいくつかピックアップして、口頭で「○○高校と○○高校にしておいたら?」とアドバイスしましたが、それでもかなり手間取りました。



言った高校の名前を書くだけなのに?とその時は不思議に思ったのですが、出来なかった理由は予想外のものでした。  


Kさん、漢字が全然読めなかったのです。


高校の名前が難しいから読めなかっただけではありません。


今までも、問題文を読む時間が長すぎると感じることがあったので、私は思い切って小学校3年生の漢字の問題を解かせました。


衝撃的なことに、ほとんど解けませんでした。


丸つけをして返却し、翌週同じ問題をもう一度やって貰いましたが、○が増えるどころか、先週出来たところまで間違える始末でした。


最初に述べたように学年は中2です。

通っているのは普通学級です。


勉強はどの科目もほとんど出来ないに等しい状況で、(英語以前にアルファベットも書けませんでした)学校の宿題も塾の宿題もやり切れないことが多かったのですが、その理由はそもそも問題文が読めていなかったせいだったんです。


お母さんからも、前任の先生からもその事は聞かされていませんでした。というか、気づいていなかったと思います。


お母さんは、勉強しても成績が上がらないし、受験に興味を持たないと子供のことを嘆くわりに、Kさんがどのような状態にあるか分かっていませんでした。


Kさんも何度も質問したり、できるようになりたいという気持ちはあるように見えましたが、どこで躓いているのか自分でも分からず、宿題は全然終わらないし、授業は分からないしといった状況だったのでしょう。


Kさんと面識のある他校の先生にこのことを相談した際も「よく気がついたね?!」という様子でした。


お母さんは他の生徒と同じ頻度で通わせて高校進学することが希望のようでしたが、正直なところ手遅れだと感じました。


諸々のことが重なり、自分は体調不良に陥ってしまい、この仕事から離れたため、Kさんがどんな進路になったのかは知りません。

しかし、こういうケースはこの子に限ったことではないように思います。


親も周りの大人も本人も気づかないまま大人になり、原因不明の生きづらさを抱えて、努力不足だと怒られ続け、どのようにお金を得て、生きていくのか、適切な支援に結びつくのか、未だ不安が残ります。